桃の三名人‐その弐

高橋さんの畑から車で30分くらいだろうか、そこに、いつも大忙しの小林さんがいる。 加納岩地区と呼ばれ、土目は少し赤い。元河川敷の扇状地ほどではないが、水はけは良い。 しばらくすると、軽トラックを走らせて日に焼けた人懐っこい笑顔の小林さんがやってきた。

kobayashi.JPG 屈託のない笑顔の小林さん。


小林さんがすばらしいのは、

 一、効率と品質を追求した剪定技術、

 二、広い面積

 三、複数の品種

の三つ。

 一、効率と品質を追求した剪定技術

小林さんの樹の作り方は、二本仕立て。高橋さんの一本仕立ては太い幹を一本直立させる考え方だが、これを二本作るイメージだ。お互いの枝が日当たりを邪魔せず、なおかつ収穫の効率をあげる剪定方法だ(図1)。それぞれの幹の横に即枝が交互に伸びるようにし、幹の先を短く、幹の近くを長くして、下から見上げると三角形になるように即枝を作っていくのだ(図2)。

IMG_4272.JPG 図1

IMG_4267.JPG 図2

加納岩は、その名を冠した白鳳も白桃もあるくらいで、桃の産地としては著名。そんな地域でも、小林さんはいち早く草生栽培を取り入れ、品質向上を掲げた先駆者だ。そのため、若い地域の農家さんが、剪定方法を小林さんに習いに来るという。 初めて会った私にも、地面に図を書いて丁寧に教えてくださった。慣れているわけだ。

 二、広い面積

日本は狭い。そのため、農家さんは、小さな面積の畑を何箇所かに複数持つのが一般的。特に山がちで民家の多い山梨はその傾向が強い。小林さんもその例にもれず、7~8箇所に畑があるらしい。

「全部あわせるとどれくらいの面積があるんですか?」と聞くと、

「実際に稼動しているのは、あそことあそことあそこだから…。9反(=0.9ha)くらいかなあ。」と答えてくれた。

まあまあ広いか。 …? 実際に稼動?

「あ、実際に稼動している、って言ったのは、そうさねー、全部で2町(=2ha)あるだけど、半分は次世代の新しい品種を育ててるですよ。桃は、品種改良が盛んでね。毎年新しい品種がでるし、樹も30年が寿命だから、どんどん新しい樹を育てていかないといけないんですよ。」

なるほど案内された畑も、半分は若い樹が植えられていた。それにしてもやけに株間(=樹と樹の間の距離のこと)が広い。株間が広いと、当然、同じ面積で植えることのできる樹の数が限られるため、収穫量が落ち、面積効率が落ちる。だが、一方で、土地の力には限りがあるから、一つ一つに樹に力がしっかりと行くから品質が良くなる。だが目先の収入にとらわれて、なかなか一般の農家さんはそこまでできないのが現状だ。

 三、複数の品種

「桃」と一口に言うが、実は、かなり多くの品種がある。それぞれ特徴があり、特に栽培適期がずれていく。ひとつの品種は7日間~10日間くらいしか収穫適期がないから、複数品種を持つことで、出荷を切らさずに安定した品質で、安定した出荷量が可能になる。

「千代姫、日川白鳳、加納岩白鳳、早生の白鳳、本白鳳、晩生の白鳳、浅間白桃、嶺鳳、さくら、一宮白桃、くにか、川中島白桃、ゆうぞら、やまか…あとは何だったかなあ…。」名前を挙げてくれただけでも15品種。いつも大忙しなわけだ。

「この、やまか、っていうのがね、また『幻の桃』って言っても良い桃なんだ。1000個の実をつけても、そうだなー100個くらいしか残らないかなー。経済的にはまったく合わない桃なんだけど、すごい、なんて表現して良いか分からないけれど、うまいんだな…!」

トゥルルル…

小林さんの携帯が鳴った。「うん、ああ、わかった、今行くから。」

小林さんは今日も大忙し。もっと話を伺いたかったが、そこで分かれた。

6月末から取り扱わせていただいた小林さんの桃も、終盤。そろそろ『やまか』が入荷するころです。お楽しみに。

IMG_4330.JPG まだ、ほんのピンポン玉程度。暑く始めた5月中旬のころだった。


■白桃 大玉 630円(税込)  2玉で1050円(税込) ~8月20日前後

■白桃 小玉 367円(税込)  3玉で1050円(税込) ほぼ終了(白桃系は大玉傾向のため)。

■黄金桃(有袋) 630円~735円(税込) ※大きさによって変動します。 ~8月20日前後  ※高橋さんの無袋栽培の黄金桃も登場。有袋栽培の優雅で強い甘みに比べ、荒々しい力強い味があります。ぜひ食べ比べてみてください。

IMG_58962.jpg 黄色の果肉に果汁が滴る。



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