「有元葉子さんがお好きなブランドよね。」

店舗に出勤前に歯の治療を行った日。

「いったいな~。麻酔が切れてきた。」と内心思いながら、デリカ側で商品整理していた。

「りょくけんって、有元葉子さんがお好きなブランドよね。」

不意に、後ろからお客様にお声をかけられた。

頭が一瞬にして、13年前になった。

ユニクロから生まれた野菜のお店"SKIP" が頓挫し、私がユニクロから、野菜の卸元であった(株)りょくけんに移り、松屋さんと下交渉をしていたころ。
野菜だけでは難しいことを思い知らされ、出来合いのものを出そう、と本当の野菜惣菜に取り組んでいた。

ところが、今と違い、野菜料理の本は、ほとんど無かった。
あるとすれば、どうやって肉や魚と野菜をあわせれば良いか?という主旨の料理本。

料理人からすれば、それは至極当たり前のことであり、野菜は甘味は出るが、旨味は出ない。
たんぱく質である肉や魚と合わさることで美味しさが生まれるのは、セオリーだ。

でも、私と永田次郎氏は、そうでないものを求めた。

ある日のこと。

永田氏が、本を抱えて、嬉しそうに会社に来た。

お持ちだった本が、「有元葉子の野菜教室」だった。

ページを開くと、野菜を主役に据えたシンプルな料理が掲載されていた。

「これ、良いですね~」

「そうだろ?」と永田氏。

「この人となんとかして連絡をとって、会いに行ってみよう。」

「え?」

永田次郎氏、行動力の塊(かたまり)だった。

コメント

人気の投稿