できたて、ほかほか黒砂糖。

サトウキビ畑とすすきの茂った野原を通り抜けると、少し広い開けた土地にたどり着いた。

「美島さんって言ってね。島の方言で、美しいことを"きゅら"っていうんで、きゅらしま製糖工場て読ませてる。親戚なんだけど、今日はいるかな?」
「そういえば、沖縄では"美しい"は"ちゅら"って言いますよね。」
「はい、(徳之)島では、"きゅら"になるんですよ。」

その日は土曜日だった。

はたして?

と思ったけれど、杞憂だった。

工場は搬入口を全開。
大きな台車にサトウキビが積まれていた。

「○○××~ そうねー」

名古さんが奥にいた美島さんに声をかけた。
本当に申し訳ないのだが、島の人同士の会話は聞き取れない、、、

「東京から来たお取引先さん。」
「そうね~。遠くから来たんね~。」

工場はいくつかの区画に分かれていて、搬入口からすぐに搾汁の機械がある。
サトウキビは押しつぶされて、竹のような皮の部分と搾汁された液体に分かれる。

それを、大きな四角い鍋に入れて、圧倒的な火力で煮込んでいく。
いかにも熱そうだ。

ある程度冷まして飴状になったものを回転釜に移し、ぐるぐるとかき混ぜていくと、粉っぽくなっていく。

サトウキビの品質が悪く、糖度が低いと、ブロックや粉状にすらならない。

糖度が足りない、と判断した時には、そこにざらめだったり糖蜜という濃い原料糖を入れて、糖度を上げて黒砂糖を作る。
美島さんのところでは、ザラメを加えるものと加えないものを明確に分けていて、加えなかったものを"純黒糖"と称している。
原料糖を加えたものは、やや透明感がある仕上がりになるので、すぐに区別がつく。
残念ながら、市販されている黒砂糖の多くが、原料糖を加えたもの。
見た目からも分かるが、裏面の原材料名に必ず記載されているので、すぐ分かる。

私が訪れたときは、ちょうど、その粉状に固まった黒砂糖を、大きなバットに引いて、厚さ4㎝の板状に伸ばし、冷ましているところだった。

「待ってね~、ちょうど今できたところだから。そこ、つまんで食べてみて。」とお母様に促されて、食べてみた。

まだほかほか。

「うん、美味しい~。最終的には甘いんだけれど、いろいろな味がしますね。」
まるで和菓子だ。
うんと甘い饅頭の皮を食べているような。

「そうでしょう。」
「うん、これは良い出来だ。」と名古さんもひとつまみ。

「今日のは品種が良いの。」
「品種???」

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