義山さん1。

「ハイ、義山です。」

いろいろ下調べして、徳之島で最初にコンタクトを取ったのが、義山さんだった。
携帯電話に電話し、「いや、俺よりも名古さんていう人がいるから、そちらに電話した方が良いよ。」
と初めての電話にもかかわらず、対応しくれたのが義山さんだった。

「僕、電話したの、覚えてます?」
「うんうん、そうだったね、それで名古さんを紹介したんだっけな。あれ、何年前だ?」
「7年くらい前です。」
「そうか、もうそんなんなるかあ。」

後で名古さんに聞いたことだが、義山さんは基本的に人嫌いで、多くの人に心を許すわけではないそうな。

しばらく話し込んだ後、

「ところで、すみません、ビニール貼ってるかと思うんですが、やっぱりなんか押さえておかなきゃいけないんですか?」

私と名古さんは、ビニールハウスの中に、義山さんだけがビニールハウスの外にいた。
ドアを抑えながら。

「あ、いや、そんなことないよ。」

そう言って、脇の、まだビニールを固定していないところをはがして、中に入ってきてくださった。

「どうね~、トマトは?」

パッパッと赤いものを収穫して、私に手渡ししてくれた。
「これは、何だったけな。もう3回植え替えをしたから、最後は、なんでもいいから残っている苗を持ってきて~と頼んだ品種だから、、、」

義山さんは、基本的にはアイコを育てている。
ハウスに入って最初に食べたのは、アイコ。

最近、最もヒットしているミニトマト品種と言って差し支えない。
細長い、ロケット側のミニトマトだ。

すべての圃場を同品種で植えるつもりが、苗を植えたところで、台風が何度もやってきて、そのたびに苗が吹き飛ばされ、植え替えた。

「思い出した、これは千果だ。」
「うん、やっぱり美味しいですね。この時期で、これだけ濃い味が出てれば、この先、もっとよくなると思います。」
「そうね。こんなもんじゃないんよねー。これが、最低(ライン)だと思ってもらえれば!よし、わかった、本当に美味しくなったときに、送る!『これだ、食べて!』って送るよ!」
「え!本当ですか?あ、でも払いますよ、大丈夫です。」
「う。じゃ、送料だけもらう!」

なんだかうれしい。

義山家は筋金入りの農業一家だ。
成人さんは、1月15日生まれ。
成人の日に生まれたから、成人(なるひと)さん。
お父様は、農学校の教師だった。
弟さんも就農している。

「なんか良いですよね、ご家族みんなで農業に携わっているんですよね?」
「う~ん。でも、みんな別々よ。3人やってるけど、独立して、やってる。俺は、園芸。施設栽培に集中してやっちゅう。弟は露地。きびとかじゃがいも。」

「そういえば、義山さん、にんにくも作ってるんですか?」
「作ってる。作っちょーよ。」
「まだあります?」
「ある!あるよ。倉庫にある。食べてみる?」

ハウスから外に出て、すぐ100m先、ハウスが途切れた向こうに、倉庫はあった。
ハウスのすぐ外に、名古さんの車が停めてあったが、車には乗らず、義山さんと二人並んで、ハウスの前の赤土の道を歩いて行った。

農業談義をしながら。

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