出作り(でづくり)のみかん畑。

「中島に行くフェリーは高浜の港を13時半に出発なんです。ここを12時に発てば十分間に合いますから!」
「早めに中島に行ったほうがええんやないか?」
「あ、いや、なんていうか。。。13時半より前のフェリーは9時台とかなんで、、、それはもう間に合いませんし。」
「飛行機は?」
「松山空港を19時30分発です。」
「そうか~。」と川田さんも納得してくださった。

「せっかく来たんやから見に行ったらええ。若いんやし。」と奥様も賛同くださった。

「それじゃ行こうか。ちょっと戻って車をあそこに停めて、一台で行こか。」

市街地のほうに少しだけ戻り、倉庫のようなプレハブの横にレンタカーを停めさせてもらい、川田さんの車に乗り込み、少し広い道に出て、”出作り”の畑に向かった。
ほっとした。
宮川早生や南柑20号も良いが、やっぱり川田さんの極早生種”太陽のしずく”の本場も見たい。
そして、そこには紅まどんなこと、愛媛果試第28号もある。

八幡浜を抜け、保内町を通り、伊方町に入る。
ほとんど道沿いに車を進めたけれど、伊方町に入り、山を上がっていくと、そこからは曲がりくねった道を進み、最後は下った。
川田さんの言う通り、30分ほどの道のり。
思っていたよりも遠かった。

「ここだけで8反はある。」

例によってモノラックがあり、再び荷台に腰を下ろした。

「こいつはちょっと調子が悪くて。本当は修理せないかんのよ。」

そう言いつつ川田さんはエンジンのひもを勢いよく引っ張った。

「私はここで待っとるから、好きなだけ見たらええ。」と川田さんの奥様が言うので、今度は川田さんと二人だけで進んだ。

日の丸 向灘のほうの園地のモノラックと違い、山の傾斜を登るのではなく、等高線上をずっと行く感じ。
さっきより怖くないが、沢の上を渡るような場所もあり、ドキッとした。
何しろ、数センチのレール一本の上を、遊園地にある子供向けの機関車サイズのエンジントロッコに大人二人が乗って進むのだ。
なかなかのスリルだが、右手と左手に広がるみかん畑が美しく、そして海がまたきれいだった。

園地は、海を抱え込むように広がっており、遮るものがない。
なるほどこれは良い。

例によって土をいじって見せてくださった。

「こっちの土のほうが、あっち(向灘)の土よりも小石が多かろ?水持ちが悪いんよ。ちょっと油断すると干ばつになってしまうから注意せにゃいけん。」
「なるほど。」
「大森君よ。」

突然、川田さんが私に顔を向けて言う。

「こういうのが分かるようにならんといけん。眼力を磨けぇ。」
「はい!」

ひとつも聞き漏らさじとみかん名人 川田さんの言葉に耳を傾けた。

通常であれば、今年のような雨の多い年であれば、もっと大玉になり、2Lや3Lはては4Lサイズまで水太りしてしまう。

「ここはな、ちょっと塩害に逢いやすい場所なんよ。去年の台風みたいにな、強い風が吹き込むと、塩分が入ってしまって、木がやや枯れ気味になってしまう。そうすると小玉が多くなる。」

もちろん摘果=間引きも行っているが、塩害にあうと、木が水を吸わなくなり、果実も小さめになる。
ただ、みかんの糖度はそのほうが上がる。

川田さんが「食うてみい。」と渡してくださったみかんは、甘酸適合、バランスが良く、内袋も薄かった。

糖度計を取り出して測ってみると、13.6度あり、そのことを川田さんに告げると、少し納得したようだった。

「そうか。あと一週間。一週間後には穫って送ろうわい。」
段々畑が崩れないように、と積まれた花崗岩の石垣。

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