柿と私10。~First Contact~

果たして、葬儀を行っているお宅があった。

礼服で参列しており、式自体はちょうど終わったか、合間の少しリラックスした雰囲気のように見えた。


今、こうして振り返って書いてみると、きわめて非常識だった自分が恥ずかしい。


それでも、なんとか連絡先だけでも伺いたく、、、


「すみません、こんな時に、、、関谷さんと言う方はいらっしゃいませんでしょうか。」

「ああ、関谷さん。関谷さんおるよ。自治会長だから、中でまだいろいろやっているのかもしれん。あ、いたいた、関谷さーん。」


ドアの向こうから、小柄だけれど、少しいかつい方が、神妙そうに出てきた。


その後、私がどのように声をかけたか、正直、覚えていない。


ただ、一言、「今、ダメだから、また別の日に来て。」と言われた事だけを覚えている。


当然である。


たしか、名刺だけは受け取ってもらい「浜松から来たの!? ―ここに電話するから。」と言われたんだと思う。


もし私が関谷さんの立場だったら、どんな風に対応しただろう?


まだ若かったのか、反省もせず、敗北感だけを感じて、浜松に戻った覚えがある。

日も落ち始め、無人の柿畑は、さらに気持ちを落ち込ませた。


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