「豆柿って興味ある?」

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岐阜県本巣(もとす)。名古屋から電車でわずか30分ほど。関東出身の私にとっては、岐阜というとかなり遠い印象があるが、実は意外に近い。また名古屋からのアクセスはとても良い立地だ。その昔、尾張を統一した織田信長が、美濃の国(現在の岐阜県の南部)を目指したのも合点が行く。現地に赴けば、あたり一面田んぼが広がり、田畑が続く。名古屋から岐阜市にかけて続く「濃尾平野」だ。信長はこの豊かな土地を手に入れたかったのだろう。

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果物栽培は、山がちの場所が良い。南西向きの斜面が最高だ。濃尾平野のように平坦で、田んぼが多いところは特に排水も悪いので、果物栽培には、あまり適した場所とは言えないだろう。

そんな思いを持ちながらも、柿の農家さんを訪ねたのは、昨年の4月のことだった。田畑や、伊吹山まで続く真っ平らな地勢を眺めながら、「大丈夫だろうか」と不安を覚えたものだった。

ところが、実際の畑を見て、その不安は払拭された。柿の木が植えられた大鉢が、ずらっと整列している。これであれば、いくら排水の悪い土地柄でも、水分をコントロールすることができ、品質も向上させられる。

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「うちは除草剤使わんでね~。草もぼうぼうではずかしい~わあ」と生産者の関谷さん。「でも、このやり方なら、良いものがとれますね。」というと、「仲間がいるから、その人も紹介したいな~。」と言う。

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付いていくと、関谷さんの畑の3倍くらいの規模で、大鉢が整然と立ち並ぶ畑に着いた。 柔和な笑顔で、小倉さんが出迎えてくれた。

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有望品種「太秋」がメインの農家さん。種無しの完全甘柿で、大きい。シャリシャリした食感が独特で、人によっては梨みたいな食感、という。ただ、条紋という黒い跡が着くのが、評価が分かるところなのだとか。太秋の独特のシャリ感と、条紋をなるべく防ぐため、多少青めで収穫する。それでも、かなり糖度が高く、食味が良い。赤くなってしまうと、かえってシャリ感が失われ、良さが半減してしまう。

鉢で育てると、生育が早くなるのか、一般的に太秋が出るよりも早い時期に収穫できる。

一通り園地を見させていただいた後のこと。

「ね。こんな大きさの、豆柿って興味ある?」

両手で丸を作り、ピンポン玉くらいの、そのサイズを示してくれた。

いたずらっぽく、楽しそうに。

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会社を退職して数年経っている、というのだから、それなりの年齢だと思うのだが、小倉さんは、時々、少年のような表情をする。

「今年は数個しかならないんだけど、来年はけっこうなるからさ。一回送ってみるから、考えてみて。」

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あれから、一年。

太秋と陽豊の様子を見に、再び、関谷さんと小倉さんを訪ねた。また、お二人の園地を一通り見た後、小倉さんが切り出した。

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「去年さ、話してた豆柿。食べれそうになったから、持って行って食べてみてください。」と数個渡された。小倉さんのところには、太秋のほか、早秋、次郎、富有と、甘柿しかなかった。ところが豆柿は、小倉家では初の渋柿。渋抜きの方法が分からず、方々に聞いて、昔は焼酎だとかアルコールだったが、今は炭酸ガスで抜く、と調べた。どこで炭酸ガスなんか手に入るのかといえば、酒屋だという。ビールサーバー用の炭酸ガスボンベを借りて、いろいろと実験をしながら、渋抜きを成功させたのだという。

「皮に書いてある数字は気にしないでください。」と小倉さん。研究熱心な小倉さんのこと、渋抜きの方法を変えて、ベストを見つけ出したのだろう。自宅に帰って、気になるので食べてみると、やけに甘くて美味しい。糖度を測ると21度あった。16度を超えると、美味しい柿だから、かなり優秀。皮もむかないで食べられると聞いていたので、そのまま食べてみると、確かに皮も気にならない。

まだ、岐阜県でも経済栽培している人は2名くらいだという。正式名称もまだ無いくらいだ。小さいからたくさんなる、という訳でもなく、普通のサイズの柿と同じように実るだけなので、とても貴重な柿だ。

少々値は張るが、味は抜群。期間限定で、残りもわずかなので、ぜひ一度、お試しいただければと思う。

■豆柿 岐阜県 1玉 158円(税込) ~10/11ごろまで

■早秋 岐阜県 1玉 630円(税込) ~10/11ごろまで

■太秋 岐阜県 1玉 525円(税込) 10/10~10/18ごろ

■陽豊 岐阜県 1玉 504円(税込) 10/20~

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