「親父、糖度の自慢してたでしょ。」

tamaakari.jpg 玉灯り

台風15号が煽った雲からは小雨が絶え間なく降り続いていた。二重三重の雲が、太陽を塞いでいる。今年の北海道を象徴するかのようだった。

むかわから車で北上。周囲は、針葉樹林に囲まれて、あちこちに北海道の先住民アイヌを思わせる看板を目にする。2時間半くらい。山がちな道が終わり、まっすぐの道に入ると、両脇に玉ねぎの畑が広がっていた。中富良野に入ったのだ。

_DSC2032hosei.jpg 

北川さんは、今期から新たに取り組む方だ。玉ねぎ農家としての天心農場と、育種家としての天心シードセンターの二つの顔を持つ。

「いやあ、大変なご注文でしたよ~」と開口一番。 

「まあ、畑はすぐ近くにありますから、まずは行ってみましょう。」 

事務所の周りは玉ねぎ畑だらけ。そのうちのひとつに、傘を差しながら、入った。 

玉ねぎは、出荷まで、いくつかの工程がある。葉が十分に枯れた後、トラクターで土と一緒に玉ねぎを掘り起こす。掘り起こされた玉ねぎを1~2週間ほど放置し、乾燥させる。その後、再度特殊なトラクターで玉ねぎを回収(収穫)し、選果、葉をカットして、貯蔵もしくは箱詰めをしてようやく出荷になる。

_DSC2030.JPG 収穫用のトラクター

_DSC2040.JPG 大型の機械で葉がカットされる。追いつかなかったものは人の手でカット。

北川さんの畑はすでに、玉ねぎが掘り起こされていた。

「私どもは、種苗メーカーと協力して、品種改良もしています。この圃場は、実験用の圃場でして、今年も手前側は実験用に、奥のほうを、りょくけんさん用に植え付けました。そうそう、○○なんていうサラダ用の品種も、御社なんかには良いんじゃないかな。りんぺんが厚く、血液のサラサラ効果が高いことも分かったんですよ。」

畑に入ってすぐの4畝くらいは、コード番号が名札に振られていた。整然と並んでいる玉ねぎのすぐ奥には、不規則に並んだひときわ目立つ玉ねぎが一面に広がっていた。

left jikken right tama.JPG 右側が実験品種(機械植え)で、左側が玉灯り(手植え)

「これ!こちらが、玉灯り(たまあかり)です。まだ皮をむいていないから照りが足りないけれど、明らかに隣の畝の玉ねぎと違うでしょう?」とやや興奮気味に北川さんが言った。

「こちらのは整然と並んでいるのに、なぜ奥のは乱れているんでしょう?」

「人の手で植えたからですよ。」と即答された。

「こちら(実験用の玉ねぎ)は機械で植えられましたが、奥のは、除草剤を使わないために、機械が使えなくて、人の手で植えたんですよ。大変でしたよ~。」

ご面倒おかけいたしました。

��~3玉をひょいと拾い上げ、事務所で糖度を測ってみた。

玉ねぎに限らず、1個体の中で糖度は違う。おおよそ、玉ねぎの糖度は外側より内側の芯の部分のほうが甘い。そのため、この種の分析をするときは、外側、中心、その間を測定するか、「間」だけを測定する。

慣れた手つきで、北川さんは、間の部分を、包丁でくくり、屈折糖度計に差し込み、覗き込んだ。

「りょくけんさんからは、糖度12度以上を基準に作ってくれ、と言われましたが、その基準はクリアしたかと思います。」とシタリ。

��個とも、13度から14度の間くらいの値を示していた。さすがだ。

kitagawa1.jpg 北川会長

腰の治療をしていたという、北川さんの息子さん=現社長もちょうどお越しになった。

「じゃ、お前、あと配送のこととか、日取りとか調整しておいてくれ。」と北川さんは、入れ替わりで席を外した。

「親父、糖度の自慢してたでしょ?」 

「りょくけんさんから、糖度基準のことを言われてからずいぶん気にしててね。玉灯りの糖度が他のものよりも高いのが分かってからは、そこらじゅうの玉ねぎを見て拾ってきては、糖度を測って、確認してましたわ。嫌なやつでしょー。」

なんだか嬉しい。

tamaaakari toudo.jpg

「除草剤を使わない、という条件で作ってくださってありがとうございます。先ほど会長が本当に大変だった、とおっしゃっていました。大丈夫でした?」と聞くと、

「うーん、そう、機械が使えなかったからね。北海道は本州とは、規模が違うから。でもね。農家としては、取り組みやすい、同意しやすい、条件でしたよ。」と言う。

「除草剤が、作物に悪いことは、経験的に分かっていましたから。」とサラリ。

「ちょっと間違って使うと、そのときに形成されるりんぺんが薄くなるんです。色もやや悪くなる。うちではどうしても他のすべての畑には、除草剤を散布していますけれど、本当に気をつけて使っています。そこれそ、ずーっと週間の天気予報とにらめっこしながら、撒くならこの3日間の最初の日だ、ってね。」

丸い眼鏡と無精ひげ。どこか、ジャン・レノを思わせる風貌の北川社長が熱っぽく語る。

「でもね、腕の良い農家ほど農薬は少ない。これは間違いない。」 まるで、自分もその一人だ、もしくは、それを目指している、と主張しているようだった。

「ところで、他の地域では作られていないんですか?」と聞くと、

「玉灯りは、味も良いし、見た目もきれいなんだけれど、唯一のデメリットは、収穫期が遅いことなんです。どうしても出荷が10月上旬にまでずれ込んでしまいます。長日性※の高い品種で、夏の間の日照時間が長い北海道だからこそできる品種なんです。」

まじめで実直な印象の会長(父)と、豪快な印象の社長(息子)。一見、両極端のようにも感じるのだが、ハートの熱さと誇りは共通していた。

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10月16日日曜日に初入荷し、来年の3月ごろまで販売する予定の玉灯り(たまあかり)。

その存在感の故に、隣の席では、味付けを、味噌にするか、塩だけにするか最後まで迷っている。

どんな評価をいただけるのか、楽しみだ。

tama.jpg

■玉灯り(たまあかり) 北海道産 約500g入り 263円(税込) ~来年3月ごろまで

■まるごとオニオンロースト 10/21(金)ごろ~

北海道フェアは 10/21~31開催!

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