りんごの話。

昨晩、浜松の駅を降りると、空気がやけにひんやりしているのを感じた。東京と比べると空気が美味しい、なんて思った。 自宅の最寄り駅を降りると、今度はキンモクセイの香りが漂う。 いよいよ秋だ。

秋のくだものと言えば、りんごと柿が思いつく。最初はりんごも津軽のみだったが、今週から品種も増え、すっぱいりんご、甘いりんご、青いりんごが揃った。どんなりんごたちなのか少し紹介したい。

akane.JPG 真っ赤に熟したアカネ。


■アカネりんご 北海道余市郡余市産

生産者は安芸さん。他に、ナイアガラやカベルネソーヴィニヨンジュースの原料、そして、プルーンも作っていただいている。西洋梨2種類も収穫が終わり、今貯蔵に入っているから、今月末には出荷が始まるだろう。寡黙な方かと思いきや、農業については、静かに熱く語ってくれる。

aki san.jpg 写真嫌いの安芸さん。愛犬に向けた笑顔をようやくファインダーにおさめた。


余市は、札幌から小樽に向かい、さらに小樽から一山越えたところにある。北海道のくだもの栽培の中心的な場所で、安芸さんのところは、赤土中心で、良い条件が揃っている圃場。平地と山の上の二箇所にアカネりんごは植えてあるが、やっぱり「山の上の方が大変だけれど、味はぜんぜん違うんだよねー。」と安芸さん。山の上の方が、日当たりが良く、水はけが良い。そして、当然、昼と夜の気温差が大きい。だが、斜めだから、管理はきつい…。

akane hojo2.jpg 赤土で斜面。手前はカベルネソーヴィニヨンの畑。


安芸さんは熟度の見極めに優れている。

アカネは、日本では珍しく香りを重点に改良された品種で、紅玉とウースターペアメインの掛け合わせだ。その結果、日本で開発された品種の中では、二番目にすっぱいりんごなのだそう。たしかに一般的に販売されているアカネは、糖度が9度~10度くらいしかなく、酸味だけが目立ってしまう。だが、安芸さんは、十二分に熟してから収穫するのでりんごは、果皮に少しヒビが入り、概観は悪くなるが、糖度は13度くらいになる。また、果皮の赤が、白い果肉の中に少し差し込む。

akane cut.JPG 熟度が高く、皮の赤みが果肉にまで差し込む。 


真っ赤に色づいたアカネは、たくさんあるりんごの中でも特に目を引く。

「あのりんご、おいしそう~」

昨日も、松屋の売場にいたらそう言って通り過ぎた若い方がいらした。

紅玉の子供なので、調理にも好適。さっそくスタッフさんがジャムをつくってきてくれた。アカネは、ジャムにしても色が美しい。ジャムやアップルパイにするのであれば、早めの今がオススメ。あまり日持ちしないりんごで、どんどん酸味が抜けてくるからだ。10月末くらいまでの販売です。お見逃しなく。

 

■トキりんご 青森県弘前市産

toki.JPGトキ。中には、赤く着色するものも。


青りんご。2004年に品種登録されたばかりの品種で、まだまだ希少な品種。量が少なく、今週いっぱいの納品で終わりになる。「トキ」という名前は、開発した土岐傳四郎(ときでんしろう)さんの名前にちなんでつけられた。公式的には「王林×紅月」なのだが、遺伝子分析をしていくと、ありえないらしく、「王林×フジ」ではないかと言われている。食感もフジに良く似ており、しっかりしていて、糖度が14度平均と高く、美味しいりんごだ。腰が高くなる王林と違い、割とずんぐりしている。こちらもお見逃しなく。

toki (1).JPG 木の上のトキ。写真は8月のもの。


 

■弘前フジ 青森県弘前市産

yamasita hojo.JPG 丁寧に整備された草生栽培の圃場。斜めに傾斜している。


りんごの王様とも言えるフジの早生種。「やっぱりりんごはパリッとしてなきゃ!」という方にオススメのりんごだ。フジは晩生の品種のため、11月に入らないと始まりませんが、それよりも先に熟する優れた品種。昨年まで、少し、食味、食感ともにフジには劣るのかなあと感じたが、今年はとっても良い出来。甘さも酸味も程よくのり、食感もフジに遜色ない。ぜひお試しください。

munakata.JPG棟方さん。


生産者さんは山下さんと棟方さん。一切肥料を与えないやり方でりんごを作っている。先代から周知の仲らしく、山下さんが10年前から、それに感化された棟方さんが4年前から、無肥料栽培を始めた。

ryokuken ha.JPG tasya ha.JPG 左が棟方さんの葉。右が一般生産者の葉の色。明らかに右の方が濃い色をしている。これは窒素成分が多すぎるため。


隣の圃場と比べると、明らかに葉の色が違う。りんごの木が持っている力を十分に、りんごの実に伝えようとするので、食味が濃い。「りんごの木の自然の力を信じているからね。」サラリと山下さんは言うが、なかなか大変なことと思う。

yamasita san (1).JPG 山下さん。後ろは毛豆の畑。


たくさんの品種が次々と始まるが、同じりんごでもかなり味、食感、香りが違う。それぞれの味をどうぞご堪能ください。

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