ハウス職人が生んだ、完熟金柑。

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「金柑」と言われると、苦いとか、甘露煮だとかが思い浮かぶ。大勢の人がそうではないだろうか。

��年前、初めて食べたりょくけんの金柑は、そんな考えを覆すに十分な美味しさだった。

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宮崎県 木城町(きじょうちょう)。宮崎県のほぼ真ん中の位置する町で、北部にある宮崎空港からは、2時間半あまりの場所に位置する。私の既成概念を覆した金柑の作り手 藪押さんはこの地に住む。主要道路をそれて、山を上がった中腹あたりの森の中だ。家屋よりも少し小高い場所に、丈夫そうなビニールハウスが立ち並ぶ。

奥さんに伺うと、ご主人はハウスの中に居ると言う。連なったハウスを順番に訪ねていき、ようやく、藪押さん本人に出会えた。

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身長は150cmくらいだろうか、小柄な方で、いかにも身軽そうな体躯をしている。実は、藪押さんの本業は、ビニールハウスの職人で、農業用のハウスを建てるのが生業だった。その傍ら、代々継承してきたみかん畑の世話も行ってきた。金柑栽培は、その延長線上にある。金柑の最需要期は、正月前の12月だ。甘露煮にするための金柑が、高値で取引される。藪押さんも、本来はその時期を狙って、収穫期を早められるハウスで、金柑栽培を始めた。

ある年、収穫されずに残っていた金柑を食べたところ、酸味が少なく、甘みがとても強かった。露地物と違い、皮もやわらかく食べやすい。これは!と思っていた矢先に、宮崎全体でも、「完熟金柑」として打ち出しが始まり、藪押さんもだんだんと、販売の主軸を"正月需要"から"完熟金柑"にシフトするようになった。それだけ、食味に差があり、お客様に喜ばれると思ったからだ。

quinqun (7).jpg ←藪押さん。

藪押さんは小柄だが、エネルギーとやる気にあふれている。農業についても、熱く語るし、研究熱心で、様々な工夫を畑に施している。

「山の上のみかん畑で、毎年、美味しい場所があってね。そこの土がやっぱり赤土なんだよね。おたく(=りょくけん)のいうとおり、赤土のほうが味が乗る。だから、その土を、金柑のハウスの中にも持ってきたんだ。」

そういえば土が赤い。礫状の赤土が盛ってある。

「あ、これは孫が喜ぶと思ってね。マンゴーを植えたんだ。」他に、ミラクルフルーツ、アセロラ、バナナがなる。これらはすべて孫のためだとか。

mango.jpg ←マンゴーの木の周りの赤土が垣間見える。

金柑のハウスに入った時は、赤土が盛ってあることには気づかなかった。よくよく見れば、麻布が敷かれており、土が見えないようになっていたからだった。

「これは、雑草(くさ)を押さえるためと、余計な水分が入らないようにするためだよ。」

quinqun (6).JPG ←ハウスの中の通路。麻布が敷かれている。

余計な水分が入らないため、水ぶくれせず、糖度が上がるわけだ。

たわわになった実を見ながら、「美味しそうですね!」というと、意外にも

「まだだ。」ときっぱり言う。

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「ヘタの周りに緑が残っている。これ(左 写真)だとまだ渋みや酸味が残っている。これ(右 写真)なら、まあ、食べられるかな。」

少しの違いなのだが、食べてみれば、その差は歴然。この見極めが、大事なのだ。

宮崎県では、糖度18度以上で3Lサイズ以上のものを「たまたま」、2Lサイズを「まるかじり」という名をつけ、ブランド化している。東国原前知事の活躍もあってブランド化は成功。某百貨店では、1玉 840円で売られ、それを求め、行列もできたという。

藪押さんの完熟金柑は、そんなブランド名はつかないが、おそらくそれを凌ぐ美味しさだ。

皮ごと食べられ、健康的で、毎年大人気のくだもの。3月上旬くらいまでのご紹介。ぜひお試しいただければと思う。

■完熟金柑 宮崎県産 100gあたり 263円(税込) ~3月上旬くらい

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