七色の畑。
三浦の青木さんの畑に久しぶりにお邪魔した。
親父さんは、慰安旅行とかで、いらっしゃらなかったが、代わりに娘さんが対応してくださった。
「区画整理が終わって、いろいろ変わったから~。」
昼下がりの三崎は、陽のあたる感じがすでにオレンジ色に近く、冬の日の短さを感じさせる。
神奈川県の先端、三浦半島に位置する三崎は、マグロの漁港があることでも知られるが、キャベツや大根の名産地でもある。
りょくけんは、あまり関東ものは扱わない主義だ。富士山の火山灰でできた関東ローム層では、肌が美しくきれいな野菜ができて、収量も多いが、決して美味しい野菜はできない、という考えを持っているからだ。
だから、三崎は、りょくけんの産地の中では、特異と言える。三崎は、火山灰もあるが、昔の地層が隆起した場所で、古い赤土が多い。加えて海。海のパワーは偉大で、絶えず海から吹く潮風が、土に適度なミネラルを運び込む。
「連作障害なんて出ねえよ。」
親父さんがよく言っていた。通常、どんな植物でも同じ作物を作り続けると、土の栄養分が隔たり、病気が出やすくなる。連作障害というやつだ。
三崎では、潮風が、絶えずミネラルを土に供給するから、連作が出にくい、というわけだ。
また、キャベツも大根もアブラナ科だ。アブラナ科の植物のふるさとは、地中海沿岸からドーバー海峡沿岸だ。それゆえ、海のそばが、適地になるわけだ。
「七色に行きましょうか!」
娘さんが歩いて、畑を案内してくれた。色とりどりのレタス類に始まり、キャベツがあり、ねぎがあり、かぶが、細い道を挟んで両脇の畑にある。三崎でも標高が一番高いほうで、相模湾を見渡すことのできる台地だ。左に下る道があり、てくてくと歩いて行く。
「ここも青木さんの畑でしたよね?」と聞くと、
「ここはよその畑になった。」と娘さん。
区画整理とは、自治体などが主体になって、より効率よく農作業ができるように、土地を平らに整備したり、農道をつくったりすることだが、一番大きいのは、土地の交換が発生することだ。日本の農地は、細かに分断された農地が多く、効率が悪い。それを自治体が統括して、再度、区画を割り振る。分断された農地が一箇所に集まることで、効率が良くなる。
そして。
「ここが七色。」
入り口から、白の大根、赤の大根、紫の大根、緑の大根、黒の大根、緑のザーサイ(高菜の一種)、赤のザーサイと続く。
面白いことに、赤の大根の葉は、やっぱり赤で、緑の大根の葉は、やっぱり緑が濃い。
順番に、作物を収穫させていただいた。
野菜の色には力がある。フィトケミカルといって、最近では、第七の栄養素とも言われる、機能成分だ。
色素になっているものは、ひとくちに言えば、ミネラルで、直接エネルギー源にはならないが、体の色々な働きをサポートする。
三崎の土地柄は、この色物野菜にめっぽう強い。他地域に比べて、色がとてもよく出るのだ。
青木さんの畑からは、これから色ものが、さまざまに開始する。
紫色のかぶ「あやめゆき」や、前述した大根たち。
ぜひ、楽しみに待っていてほしい。
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