みかんの宿命”隔年結果”。


宮川早生。11月10日を過ぎると、良い味になってくる。
「来年はとれんぞ。みぃんな分わかっとらん。」

みかんは隔年結果と言って、一年ごとに収穫量の多い”表年”と収穫量が落ちる”裏年”がある。
これは生理的なもので、隔年結果の落差を少なくする努力はできるが、連年結果させるのは至難の業で、みかん農家に課せられた永遠の課題だ。

「それは、雨が多かったからですか?それともやっぱり隔年結果で、来年が裏年とかだからですか?」
「表と裏で言えば、今年は裏年やった。でも、雨が多かったせいで、実ばっかりなりよった。たくさんなった次の年はならん。来年も裏年よ。」と川田さん。
「そうならんようにな、この実の上のこの枝。ここから上になったものは実は全部落とさないといけんのよォ。」

実がなり過ぎた木は、疲れてしまって、翌年、あまり実をつけない。
だから、人の手を加えて、新しい枝になった実を間引き、果実の量を調整する。
そうすると、翌年、その枝に新しい芽が出て、枝が伸び、果実をつけるのだ。

「うちの場合は、二人だけやから。摘果の時にはコヨーに来てもらって。手伝ってもらいよる。」
コヨーとは、たぶん雇用のことで、臨時で頼む季節労働者の方のこと。

「でもな、人を頼んでも、みんな素人やから。うちのは、テープで目印をつけてな、そこから上になっている実は全部、とるように、うまく指示しとったわ。」と川田さん。

「そしてな、このあたりが全部、宮川。あの少し向こうに、南柑20号が植わっとる。」

宮川早生は、早生みかんの横綱のような定番品種で、りんご言えば、フジのような存在。
東海の興津早生と西日本の宮川早生が、早生みかんの頂点と言って良い。
ただ、残念ながら、収穫は11月10日以降なので、まだ緑のまま。
うっすらと黄色になっているものは、日焼けだったり、カメムシが中の汁を吸い、そこの着色が異常に進んでしまうからであり、間引きの対象となる。
「これは日焼け。水分が抜けてパサパサになる。」

「みんな、いろんな品種に手え出してな。混ざって植えようからコヨーの人が来ても、分かりづらくてな。うちは一か所に同じ品種しか植えんようにしとるから、コヨーの方にも働きやすいんよ。」

「なるほどですね。」

「ほいで、あそこ。あの橋の手前にある島が“黒島”。その向かい側にある”出作り(でづくり)”のところに、極早生が植わっちょる。」
海を指さし、川田さんが言った。
黒島。

みかんの木の葉を少し触りながら、「あと一月先か。」とつぶやいた後、「あと一回くらい撒こうかのう、例の液肥を。」

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