やっぱり男爵なんだと思う。

スーパーでもちらほらと「新じゃが」を見かけるようになった。

じゃがいもの産地は、3月 沖縄→4月 九州→5月 静岡→7月 福島→9月 北海道 と続いていく。そのうち北海道産が圧倒的な人気とシェアを誇る。このため、3~8月に出回る他産地のじゃがいもは、北海道の出荷が始まる前に、売り切るように努力する。北海道が始まったら売れなくなってしまうからだ。

andes patata.jpg 南米のペルーの市場に並んでいた色とりどりのじゃがいもたち。

品種も様々なものが現れた。キタアカリに始まり、インカの目覚め、レッドムーン、アンデスレッドなど。もともと、じゃがいもの生まれ故郷であるアンデス地方には、様々な色のじゃがいもが存在する。それらを上手に改良し、今の品種の多くが開発された。中の果肉が赤や紫のものまで存在し、色を打ち出すもの、また食味を打ち出すもの、など本当に様々。

kitaakari.jpg キタアカリ。最近、食味が良いと人気がある。ただ、休眠時間が短く、芽がとても出やすい。

会社で、私の隣の隣に座るKさんは、レッドムーンが大好きと言う。メイクイーン※に似たねっとり感とともに、甘さがあり、名前から察せられるとおり、赤い外観が特徴。少し黄みがかった中の果肉もおしゃれなじゃがいもだ。

red moon-3.jpg レッドムーン。赤い外観に黄色の果肉。

銀座店の売場の九州出身のOさんは、出島(デジマ)が一番美味しいと胸を張る。出島は、長崎県が開発した食味の良いじゃがいもで、Oさんが言うようにとっても美味しい。芋としての味が濃く、ホロリとした食感も良い。

nisiyutaka.jpg出島(デジマ)。写真は皮が薄い新もの。

インカのめざめの評価も高い。収穫したてはそこまで特徴が無いが、貯蔵すると、甘みがグッと増し、栗とさつまいもをあわせたような、別物の味を醸しだす。ただ、収穫量が極端に低く(病気にかかりやすく、大玉に育たない)、苗も限られるためか、なかなか広まっていない。

それでもなお、やっぱり男爵が一番と私は思う。

josouzai siyou.jpg じゃがいもは、土から上の葉が黄色くなってから収穫する。北海道では、効率化のため、枯調剤を散布する。右半分が枯調剤を撒いた畑。廣田さんは撒かない。

hibi ware.jpg 廣田さんのじゃがいも。皮にひび割れがたくさんある。これが完熟の証拠。新じゃがではまず出ない(早掘りのため)。

圧倒的な作付面積を誇る男爵は、北海道開拓の際、川田男爵と言う方が、導入し、そこから「男爵」という名前がついたと言う。じゃがいもの品種改良は、よくも悪くも、この男爵を基準に行われた。実は、男爵は暖地では栽培できない。日本列島の東海地方より南では、暖かすぎて育たないのだ。

先ほど産地リレーについて触れたが、少し間が空く時期があるのお気づきの方もいたかと思う。 もともと貯蔵可能なじゃがいもだが、9月から次の3月の収穫までかなりの期間がある。これを埋め、早い時期のじゃがいもを!と開発されたのが、ニシユタカ。今出回っている「新じゃが」のほとんどがこの品種だ。早く収穫できるのが、このじゃがいもの特徴で、食味の方は、正直あまり…。

九州などの暖地でも美味しいじゃがいもを!と開発されたのが、出島で、ニシユタカの親だ。お店でも、長崎のとっておきの出島を4月から販売する予定だ。

例年、関東での貯蔵がうまくいかず、お店で、3~4月の間に、じゃがいも販売できない時があったが、今年は、産地である北海道で貯蔵していただいた。

hirota.jpg 廣田さん。息子さんとともに農業に従事。70を超えてもなお元気ハツラツだ。

「2月までおいておくと、甘くておいしいよー」

生産者の廣田さんが、訪問したときにそのようにおっしゃっていたのをヒントに、全量を関東に持ってくるのを止め、3、4月販売分として、産地での貯蔵をお願いしたのだ。いよいよその男爵が日の目を見る。

panorama-2.jpg 森だった台地を開墾した、見晴らしの良い畑。

北海道 ピンネ山のふもとに広がる赤土の台地に、廣田さんの畑はある。決して肥沃でないのに、肥料もかなり抑えてつくるから、まん丸にならず、ただでさえでこぼこが強い男爵がさらにでこぼこになってしまう。とっても素敵な畑で、台地で周りを森に囲まれているのに、視界が開けている。そりゃ、ここで育つじゃがいもは気持ち良いだろうなあ、と思う。もともとホクホク感が強く、味が濃い廣田さんのじゃがいも。かの地で、越冬させた後、どんな味になっているか、とても楽しみだ。

■じゃがいも(男爵) 1袋 263円(税込) 3月20日(火)から登場予定。

※メイクイーン …日本での登録名称は、メークインが正しい。ただし、語源は May Queen。

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