以心伝心…?

会社の電話が鳴ったので、半ば反射的に出ると、いつもの営業電話と様子が違う。

「おお、大森君か。八幡浜(やわたはま)の川田です。」

日本有数の産地ブランド"日の丸"のみかん生産者、川田さんからだった。

忘れていないのは私だけではなかったようだ。
5月13日、きっちり三日前。

みかんの花を見に来なさい、というお誘いだろうか?

「今、何を売りよーか?」

「パインですとか、カラマンダリンですとか、びわですとか。スイカも好調です。」

5月と6月は、国産のくだものが少ない時期である。
桃やさくらんぼ、ぶどうなどのわかりやすい、主力級のくだものが始まるまで少しの間、空白期間と言って良い。

「そうかぁ。熊本からスイカも出よーなー。俺も、レモンを切らなきゃ、今時期、売れるものもあったが…。」

レモンは、栽培ブームがあり、一気に栽培量が増えた作物。
みんなが作りすぎて、思ったような価格がつかず、栽培をやめた農家が多数出た。
川田さんも、その一人だったわけだが、今になって、再び人気を集めている。
それを悔やんでの発言だった。
輸入レモンには、発がん性が認められ、禁止されている農薬"チアベンダゾール(TBZと略す)"か"イマザリル"が必ずと言って良いほど使われている。
厚労省は、この農薬を、食品添加物として認めており、国内の消費者の方々が、レモンの皮が使えない、ということで、国産レモンが人気なのだ。

「みかんの花は、今年、多いゾ。だが、もう盛りを過ぎちょる。」

スイカも10日間早かった。
トマトも一週間早い。
みかんの花が早い、というのは予想できたことだった。

「いつもは、5月13日の前後だが、今年は、もう落ちてきたな。」

「ああ、やっぱり。行きたかったんです、本当に。」と言うと、

「じゃあ、とり前に来るかー?」

「とり前?」

「採る前、収穫する前やぁ。」

「はい、ぜひ。」

「そうか、じゃ、まっちょる。」

「はい!」

「そうやあ、みかんジュース、板橋の方に送ればいいかー?。」

「みかんジュース!?川田さんのみかんを搾ったんですか?」

「そうやあ、飲んでみてくれ。それで、良かったらまた買うてやぁ。」

「はい、楽しみにしています。」

約束が果たせそうになく、どうしたものか、と思っていた方から、期せずして、電話をいただいてしまった。
お叱りを受けるかもしれない、と思ったのに、ジュースサンプルを送ってくださる、そしてまた来い、と言ってくださった。

嬉しい。
そして、届くのが楽しみである。

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