藤尾さんたちの取り組み。

富士川の支流というか源流の一つである身延川が街道に沿って流れている。
豊岡小学校から街道と川を隔てたところに、真新しい電気網で囲まれた細長い園地があった。

「基盤整備、したんですね!」
「はい。」

地元の方が、自分の土地に、細々と植えてきた”あけぼの大豆”。
ほとんどが自宅用で、余った分を、JAに出荷してきたような、本当に小規模栽培。
それをまとめあげ、分断していた畑を一気に昨年整備し、ひとつなぎにした。
地元の地主さんとの交渉も多かったことだろう。
水平もきちんととられており、1ヘクタール弱で、一段、一段と段々畑になっている。
側溝も掘られて、畑はとても近代的。
周囲の緑や紅葉した風景とは一線を画す。
ただ、豆自体は、すでに緑ではなく、黄土色の大豆がずらっと並んでいて、若干荒廃した雰囲気もあり、不思議だった。

「害獣がやっぱり来るんですね。」
「はい、地元の人が言う”ムジナ”とかが食べにきて荒らしに来ます。」

ムジナとは、野山に住む小動物を指し、代表的にはアライグマを言う。
タヌキやハクビシンのことも”ムジナ”と呼ぶ人は呼ぶようだ。
それらの小動物が大豆を食い荒らしてしまうので、その防止のため、電気を流した網で周囲を囲んでいるのだ。

「この網のおかげだいぶ獣害も減りました。」

軽トラを下りて、入口の扉を開けながら、藤尾さんが言った。
囲まれた網には、数か所出入り口があって、解錠してから、入るようになっている。

晴れていたので、とても気持ちが良い。

農薬は2~3回、肥料は基本的に行わない。
豆類は、根粒菌と言って、根に微生物が着いて、窒素分を付着させる。
余計な肥料を必要としないし、施肥をすると、本体である木だけが大きくなって、実が育たない。

「正確には、ミネラルだけは少し与えてますけどね。」

微量栄養素だけ畑には施肥している。

「そのことで、また、食味が向上したと思っています。」と自信を見せる。

「ここと、もうひとつ山の上にも畑を用意して、今年こそ、大豆の加工品も作っていきますから。」

あけぼの大豆の経済栽培化への最大の課題は、その収穫期の短さにある。
2週間程度しか栽培適期がないのだ。
いかに栽培面積を増やしても、そのわずか2週間に集中してしまうため、枝豆だけでは一年を通しての事業にならないのだ。

それでも、農協が1日2000袋しか出荷できないところ、藤尾さんたちは、ベルトコンベアなどの導入と作業工程の見直しで、1日最大で2万袋出荷したそうな…。

そしてまたここで特徴商品がひとつ。
枝豆農家が決してやらないこと。

”完熟”枝豆。

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