トマトマニア 鈴木さん

幹線道路を少し中側に入ると、比較的きれいに区画整備された田園風景が広がる。

小学校低学年の下校時間にちょうど当たったのか、ランドセルに黄色のカバーをかけた男の子たちが道路を縦横無尽に歩いていた。

愚息もこんな感じかな。

ちょうど帰宅するころなのだろうかと思うが早いか、あ、学童保育に預けているんだった、と思い出した。
赤ゆめ
鈴木さんのトマトのハウスは、ご自宅のすぐ裏にある。
りょくけんの産地にしては珍しく平らな土地にあり、土壌も砂地だ。

ハウス。駐車場から見たところ。2連しか見えないが、奥に向かって連棟が続く。
ハウスの中を見ると、収穫作業中の鈴木さんとお母様とお姉さまがいらした。

「お邪魔しまーす!」
ゆめ
ハウスは9連棟になっていて、右半分に「フルーツトマト ゆめ」と「フルーツトマト 赤ゆめ」の大玉品種が植えてあり、左半分に、カラフルトマトが9種類植えてある。
10年ほど前に、りょくけんの同僚と訪れて以来だ。
右上のほうにあるのが”赤ゆめ”

「”ゆめ”にもふたつありまして。」

鈴木さんとはお父様の代からのお付き合いだ。
ちょうど、美味しんぼ第7巻に登場する永田照喜治と掛川の石山さんが、高糖度のトマトに取り組んでいたころ、鈴木さんのお父様と仕事をしていたとか。
今日は近くのマルシェに販売に行っているらしく、お父様はお留守だった。

鈴木さんは自ら育種する。
トマト栽培のノウハウは、お父様を通じて、永田照喜治の考え方を学んだが、品種は、独自品種。
大学を出て、種苗会社に入社し、品種改良に取り組んだ経験を持つ。
就農後はその知識を生かして、トマトの独自品種開発に取り組み、差別化したトマトを販売する。

”ゆめ”は大玉フルーツトマトの看板商品。
高知のほうで、”ゆめトマト”というトマトがすでにあるらしく、先方で商標も取っているので、わざわざ「フルーツトマト ゆめ」という名称にしている。

そのゆめにも二つの品種があるという。

「この少しオレンジがかかったほうが、”赤ゆめ”で、ピンクっぽいのが従来の”ゆめ”。」
左が”ゆめ”。右が”赤ゆめ”
「うちの育種の方針は、果肉の部屋数が多いものをつくること。赤ゆめのほうが糖度が高いんだけれど、果肉がやわらかめ。ゆめのほうがしっかりした果肉。」

しっかりとベースグリーンがのり、60~80日かかって育った小玉のゆめはいかにも美味しそうだ。

「ところで鈴木さん、これ、みんなだいたい”黄化葉巻”にかかってますよね?」
黄化葉巻病にも耐性ができる。

鈴木さんには聞きたいことがいくつかあった。
前回訪ねた時にお父様が「黄化葉巻は何年かすれば影響が出なくなる。」という言葉を確かめたかった。
ほぼ、見渡す限り黄化葉巻にかかっている。

「そうですよ。黄化葉巻が初めて日本で確認されたのが、30年前。それから大騒ぎだったけれど、3年もすればおさまって、収穫量には影響が出なくなります。」
「耐性ができる?」
「はい。うちは全部、挿し木とか接ぎ木で増やしているから、だんだんと耐性ができてくる。」

鈴木さんは、種はまかない。

”脇芽”を摘み取り、鉢植えに差して根を出して、ハウスの中に移植/定植する。
植物は不思議なもので、枝などを土に差したり、他の木の枝を切ってさしておくと、きちんと生長する。いわばクローンだ。
”脇芽”は、トマトで言うと、主幹でないツルと枝の間に出る新芽のこと。
それが一番エネルギーが旺盛でもあり、一般的には主幹と果実に栄養を持っていくために、摘み取る。
この脇芽を土に差すのが一番、活着しやすい。

「この赤ゆめも2~3年前まで、収量が落ちたけれど、もう今は大丈夫。」

黄色っぽくなり、くるくると巻いている枯れそうな葉を見ると、とてもそんな気がしないが、草姿とは対照的に、一段につき3つのトマトがきっちりと生っていて、きれいなベースグリーンが入っている。

葉をいじりながら、鈴木さんが続ける。
「コナジラミに対しては、マシン油とでんぷんを混ぜたような”農薬”を使っているんだけれど、ここのところ、このハモグリバエが出てきていて、、、いよいよカウントしなくてはいけない農薬も使わなくてはいけないのかな、と。」
「え!?」

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