”ささげ”と”モロッコインゲン”

北海道の余市から、”ささげ”というインゲン豆を長いこと扱っている。
作っているのは、くだものでも盛んにお世話になっている、安芸さん。

普段、見るような細いものではなく、大型のインゲンで、14年前、初めて目にしたときには面食らったものだ。
当時のユニクロ傘下の八百屋、SKIPの商品担当者が言うには、

「北海道では、本州のような小型のインゲンはほとんどなく、平鞘の大型のこのインゲンが普通。」

とのことだった。

確かに、北海道では"普通"のインゲンはほとんど作られていない。
最近でこそ、本州に向けて出荷するために、少し作られるようになったが、それでもあまり多くは無い。

シャキシャキしてやわらかく、普通のインゲンと同様に扱える。
特に、安芸さんのものは、甘くて美味しい。


■ささげ 北海道産 378円(税込)
https://www.shop-ryokuken.com/SHOP/31923.html

ところで、この”ささげ”。

ややこしい名称を、北海道の方はつけたと思う。
もはや伝統的に、その名前で呼ばれるので、議論にすらならないが、本来のささげ豆は、もっと小粒で、ものすごい長さ(それこそ1mくらい!)の鞘を持つ。
”16ささげ”とか代表的な品種には"華厳の滝”がある。

このささげ豆とは、まったくの別品種である。

ついで、”モロッコインゲン”と何が違うのか?という質問をいただいた。

りょくけんでは、冬から春にかけて、沖縄県産のモロッコインゲンを扱っている。

ささげのように平鞘の大型のインゲンだが、豆がもう少しふっくらして、鞘が薄い。


↑モロッコいんげん
微妙だが、沖縄のほうが大きく、豆がしっかり育っている。
 

「だから、別物!」といつもお答えしていた。

とはいえ、年もとり、少し疑問もわいて、少し調べてみることにした。

分かったのは、少々、話の次元が違う、ということ。

インゲンには、大きく分けてふたつの分類がある。
すなわち、丸インゲンと平鞘インゲンだ。
(ちなみに、それぞれに、つるありとつるなしの品種郡も存在する。)

関東で一般的な丸インゲンに対して、平鞘のインゲンは、北海道や沖縄も含む、関東関西以外では、ポピュラー。

この平鞘インゲンのことを、"モロッコインゲン”呼ぶ。
名称が付けられた頃には、外国と言えば、”モロッコ”だったそうで、舶来のインゲン、というような意味合いで、”モロッコインゲン”の名がついた。

北海道の”ささげ”も大型の平鞘インゲンの一種なので、”モロッコインゲン”と呼んで差し支えなさそうなのである。

ただ、品種は、微妙に違う。
北海道のささげの品種は、”まんずなるインゲン”と”大平鞘五寸(おおひらさやごすん”といって、豆をあまり膨らませないで収穫するタイプ。

沖縄は、インゲンのことを年に3回取れるので、三度豆と呼び、平鞘のインゲンを、平三度(ひらさんど)とか、”美味しい”の沖縄方言にかけて、”まーさんど”という名称で販売している。
沖縄の品種は、”ビックリジャンボ”。
こちらの品種は、鞘を大きくして、豆を膨らませても、鞘があまり硬くならないタイプのため、ある程度、豆を太らせてから、収穫するようだ。
察するに、本州で販売する際に、平三度といっても通じないし、まーさんど、といっても通じないので、平鞘インゲンよりもインパクトのある”モロッコインゲン”という名称を使うだけのようである。

まとめると。。。

インゲンには、丸鞘インゲンと平鞘インゲンのふたつの分類があり、後者を”モロッコインゲン”と呼ぶ。
平鞘インゲンには多くの品種が存在し、豆をあまり膨らませないで収穫するタイプと膨らませてから収穫するタイプがあり、北海道では、もっぱら前者が栽培され、流通している。

いずれにせよ、どちらも、美味しい。

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