九州最南端のキノコ屋さんの挑戦。

えのきやしめじといったキノコは差別化が難しい。

なぜならば、えのきであれば、なんというのか、品種的にシャキシャキしており、うまみがあるからだ。
しめじについても同様。
しめじであれば、うまみがある。

しかも施設栽培で、他の農産物に比べ、圧倒的に生産が安定している。

そこで、私は、関東から、うんと遠い生産地を選んだ。

貫見さんによると、それは正しく、九州最南端のきのこ生産者なのだそうだ。

貫見さんが、キノコ栽培を始めたのは、50年以上前。
当時は、しめじといえば、今で言う”ひらたけ”だった。
ただ、ひらたけは、日持ちが悪いため、ぶなしめじに切り替わった。

その後、経営の中心をえのきに切り替えた。

「きのこは、差別化が難しい。」

貫見さんと私の意見は、奇しくも同じだった。

「えのきにしても、しめじにしても、ホクトさんの価格が基準になる。」

お。

具体的な名前が出て驚いた。

「市場に出荷すると、ホクトさんがこの値段なら、ここはこのくらい、ここはこの単価と決まっていくんです。」

いわずと知れたキノコメーカー。
全国的なシェアを誇り、市場価格を左右する。

「どんなに品質のよいものを作っても、ホクトさん以上の価格はつけてもらえない。だから、もう市場出荷はやめました。」と貫見さん。

貫見さん。「写真撮るんですか!?人相悪いからなあ~」

「こんな話もある。店頭で販促のために、レシピを持っていって、どうです?と自分とこのきのこをアピールする。『美味しいわね、買ってくわ。』といわれるけれど、ホクトのほうを手にとっていくんです。あれは悔しかったなあ。」

「うわあ、それは悔しいですね。」

「水も違うし、田舎っぽさを出そうと思って、サイズを大きめで取るから、明らかに味が違うんですよ。苦味が出ない。でも、ホクトさんのを買っていくんだよなあ。」

そんな苦労もしながら、現在は、すべて県内の販売店と直接交渉し全量を納めているのだそうだ。

貫見さんのえのきもしめじも、かなり大きい。

銀座店で販売していても、見た目で目を引くので、栽培日数をかけて、大きくするという貫見さんの作戦は成功していると言って良いだろう。

「じゃ、見ますか?」

新築の事務所を出て、生産現場へと向かった。

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