”無農薬”のお茶。

「ところで、いわゆる"無農薬栽培"じゃないですか。」

「はい。」

少し間を開けて

「"有機栽培"のほうが売りやすいんでしょ?」

太田さんにとって、それは何回も受けた質問なのかもしれない。

2006年以来、"無農薬栽培"という表示は禁止になった。
無農薬栽培でも使用して良い農薬があり、隣接する畑で使用する農薬が風によって降りかかることもあるため、消費者に誤解を与えると考えられたからだ。

代わって、"特別栽培"という表示が導入されたのだが、一般の方には浸透していない、といって差し支えないと思う。
※詳しくはこちら↓(りょくけんだより バックナンバー)
http://ryokuken.blogspot.com/2017/05/blog-post_6.html

「肥料は、化学合成肥料も多少、緊急時に使うことがあるんですが、それは確かに"有機"のものに切り替えられるんです。」

有機栽培の定義ははっきりしている。
3年間、その土地で、化学合成された農薬及び化学合成された肥料を使わないで育てること。
かつ、事前に申請し、第三者の認証を受けること。

「でも、もうひとつ問題があって、嬉野の場合、"緩衝地帯"が確保できないんです。」

有機栽培の場合、慣行の栽培(=通常の栽培方法)を行う園地と、30m離れていなければならない。

嬉野のように、隣の別の農家さんの畑と、車が一台やっと取れるくらいの幅しかない農道でしか隔たれていない産地では、かなり難易度が高いのだ。

この"無農薬栽培"表示の禁止のガイドラインには苦労した。
パッケージはすべて交換したし、長年のお客様から「無農薬じゃなくなったの?」という問い合わせを多くいただき、説明して、ご納得いただくのには時間がかかったっけ。

標高150mの茶畑には、太田さんの秘密の工場もある。

お茶には品種も多く存在し、太田さんも7種類~8種類の茶葉を育てている。
品種のほか、摘み取る時期や、かぶせ茶といって、覆いをしてテアニンを増やした茶葉もある。
りょくけん茶は、その中から、5~6種類をブレンドして調合する。

最近では、茶葉からお茶への精製方法も複数種取り入れ、複雑で奥が深いものになっている。

嬉野では、釜ぐり茶が最もポピュラーな方法で、蒸した茶葉をくるんと曲がった勾玉状に仕上げる。
効率が悪い、ということで、廃れていた釜炒り茶も取り入れた。

最近人気なのは、ほうじ茶。

農家によって、扱う茶葉の種類が違うが、多くの場合、番茶といって、新茶ではなく遅い時期に収穫した茶葉を焙じる。
香ばしさが加わって、美味しい。

太田さんいわく、ここに新茶の茶葉などを使うと、別の風味が出て、香ばしさを純粋に楽しめないのだとか。
「"加賀棒茶"ってあるじゃないですか。あれは茎を使うんですけれど・・・」

お茶は、葉だけでなく、茎もお茶にすることができる。
ただ、風味は変わる。

「そういえば、照喜治さんのところにお邪魔すると、必ず、茎茶をご馳走になりました。『太田さんの茎茶だぞ。』って。」
「懐かしいですね。そういえばお送りしてました。あれも好みですけどね。なんていうか、茎には甘み成分が多いんですよ。その美味しさがありますよね。あんまり取れないんですけど。」

最近、力を入れているのは、発酵。
ーいや。

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