「今年は、桃にお金をかけるのはやめたんです。」

店頭で販売接客していると、オセが出てしまった桃をしげしげと見つめる女性のお客さまがいた。

オセのある桃を銀座の一等地で販売するのは、少し気が引けるところもある。

「ここのところの晩生の桃は、とても大きくて、自分の重さで、ここ(=銀座)に来るまでにこうやって押されて茶色くなっちゃうんですよ。。。決して古いわけではなくて、絶対に美味しいんですけど。」

きちんと完熟して育った桃は自重で下の部分がつぶれてしまう。
せっかくここまで大きく、立派に、美味しく育ったというのに、とても悲しいことだ。

でも、女性客からは意外な言葉が発せられた。

「でも、じゃあ、美味しいですよね?」

「はい、絶対美味しいです。」

「じゃあ、黄色と白の桃で、どう違うんですか?」と質問が続く。

白桃と黄金桃の違いは難しい。
昔、よくあった缶詰用の桃と勘違いされるが、最近出回っている黄金桃はさにあらず。
正真正銘、白桃からの枝変わりで、”すっぱい”、”かたい”昔の黄桃とは、全く違う。

味も良く似ている。

「とてもよく似ていて、、、ほんのわずか、ほんのわずかなんですが、黄色の桃の方が、酸味があります。でも、もう終わっちゃう、時期限定の桃なので、黄金桃がおススメかも。」
そうお答えすると、お客様は、じゃあ黄金桃を、と購入された。
オセのある黄金桃。

「実は、、、今年はどんな高い桃を買っても、全然美味しくなくて。”もう今年は桃にお金をかけない!”って決めたんです。でも、これなら。」という、これまた意外な言葉だった。

今年のように7月に雨が多かった年は、産地の力がモノを言う。
水はけが良い土地でないと、糖度が上がらない。
水はけが悪いと、ただ、雨の水分で、大きくなるだけで、中身が伴わないのだ。
(逆に、昨年のような、雨の少ない、暑い年は、どんな産地でも、大きくならないけれど、糖度は乗る)

「どんな一等地の産地ブランドでも、そこの農協を通ってれば、その産地ブランドで販売できますからね。今年は大きくて立派な桃は水っぽいと思いますし、ブランド産地で、値段が高いからって美味しくないと思います。」

オセのある桃なので、特に気を付けてお包みしてお渡しした。

「うちの場合、桃でも、一人の農家さんからしかとってないので。水はけの良い、限られた畑からしか来てないので、今年みたいな年は、他の産地よりも一定の差が出ます。」

自信を持ってオススメしたのだけれど、少し心配になり、夜中に食べてみた。
ーやっぱりうまい…。
酸味は、種の近くにはあるけれど、ほとんどなく、繊維質も少なくて、美味しい。。。
喜んでくださっていると良いな。

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