”論語と算盤”の間で。

期せずして、パプリカの売り込みが、農家さんからあった。
サラダ惣菜を展開するにあたって、パプリカの周年化は絶対命題だったので、3軒の農家をつないで、現在は1年間途切れなく供給できている。

既存の農家さんとの絆やご縁も大事にしたいので、あまり余所見をするほうではない。

ただ、電話口の向こうの農家さんの背景や育て方も同意できたし、背景もあり、土耕だった。

国産とはいえ、土耕のパプリカの生産はとても少ない。
ピーマンの倍以上の日数をかけて育つパプリカは、エネルギーをとかく使用するので、少し気まぐれな土での栽培は難しく、ほとんどが水耕栽培。

水を流した大きなプランタみたいなもので、液肥をやって育てる。
木もばてやすいので、頻繁に花落ちし、果実が実らないことも多い。

サンプルもすぐに送ってくださり、重量感や食味も良かった。

「ぜひ、紹介して、販売してみたいな。」
頂いたパンフレット。

週明けに、農家さんから再度お電話をいただく。

「既存の農家さんと合わせてで良いので、扱ってもらえませんか。」

パプリカは、前述したようにとかく生産が不安定だ。
突然、取れなくなる週もある。
複数の産地を同時期に持つことで、供給は安定するだろう。

少しその気になっていたのだけれど、どうしても、ウンと言えない部分があった。

お値段である。

既存産地の2~3倍の単価だった。

難しいところである。

良い商品であり、その農家さんを応援したい気持ちもあり、自社にもメリットがあって、きっとお客様も喜んでくださる。

とはいえ、企業として、赤字で販売するわけにもいかない。

”論語と算盤”のはざまで、行ったり来たり悩むのだけれど、最終的には、判断をしなくてはいけない。
農家さんも価格面で歩み寄ってはくださったが、それでも開きがある。
物流の課題もあった。

「もう少し私たちの栽培技術も上がって、その値段に近づけるようになったら、またお声おかけしますね。」

お互いが赤字になっても、良いお付き合いはできない。

「せっかく私どもにご興味をお持ちくださったのに、すみません。ぜひまたお声おかけください。」と告げて、電話を切った。

ふうーっと息を吐いた。

どんなに商品が良くても、自分たちで販売して、きちんと利益を残さなくてはならない。
その利益の大小が、お客様が認める企業価値だ。

ー企業って難しい。
渋沢栄一著「論語と算盤」企業経営は、道徳と利益を両立してこそ継続できる、と説いた。

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