大分杵築の夕暮れ3。

「久しぶりやね。」

社長になってから、なかなか農家さんを訪ねることが難しくなった。
圧倒的に時間的な余裕がなくなってしまった。

「すみません、ご無沙汰です。」
「まあ、中入って。」

いちごトマトのハウスに入った。
連棟ハウスの中にびっしりとトマトの茎が茂っていた。

11月に新しいビニールを張り直したばかりだという。
「古いビニールをはがして、張ったところでね。やっぱり全然違うんだよね。」

年月を経たビニールは、遮光しているようなものらしい。
透過率が変わり、トマトの成長にも影響を与えたようだ。

2018年は天候不順がひどく、苗の生育に難があり、苗の供給が追い付かなかった。

「だから、ここ、この辺りは、二本仕立てにしているから、出始めが遅いかな。ま、9割5分は1本仕立てだから、例年と変わらず、始められると思うよ。」

2本植える場所に、1本しか苗が無いので、いつもならツルを一つしか伸ばさない"一本仕立て"にするところ、主幹をもう一つ伸ばして、"二本仕立て"にした訳だ。

面白いもので、二本仕立てにしたからと言って、収穫量は2倍になるわけではない。
一本仕立ての方が早くから果実をつけて収穫が可能になる分、一定の収穫量と期間がある。

「30数年、トマト作り始めて経ったからね。1年1年(トマトの)顔が違う。"引き出し"は多く持っとくことだよね。」と山﨑さん。
「そうそう、それと、分からない時に聞ける人がいるかどうか。」
「あ、わかります。経営と一緒です。。。」

「ま、やらなあいいものは分かったかな。」
「なるほど。やらなくて良いことですか…。」

ふと自分の胸に手を当ててしまう。

「まあ。あれだよ、大森君。品質だけは確保するから。」と山﨑さんがきりっとおっしゃってくださった。
「食べてうまいのが、基本。」
「ありがとうございます。その通りだと思います。」

奥に気配を感じる。
せっせと奥様が葉かきをなさっていた。
「こんにちは~お世話になります~」と叫んだ。
奥様が作業体制のまま、こちらを見てにこりとお辞儀してくださった。

「いや、なに、気温が高いから葉が繁茂してきたので、とらなきゃと思って、作業しちょるんよ。」と山﨑さんが代弁。

「あ。ところで、山﨑さん体調崩されたとか?」

半年前だったか、電話で話した際、体調が良くない、ということを聞いていた。
色づいたいちごトマト。

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