柿と私9。~陽豊柿を訪ねて3~

 「陽豊柿をここらへんで作っている方をご存じでないですか?」

「よーほー柿?知らんね~。」

「そうですか…。」


何人に聞いた後、「大きな鉢植えで作っているらしいんですが…。」

「おお!鉢植え!おるおる。あっちのほうで、そういう畑があるぞ。行ってみい。」


言われた方向に行くと、あった!

冬のまだ寒い時だったので、柿はなっていない。

1mくらいの黒い鉢植えだったと思われるところに、まだ小さい柿の木が植えてあった。


誰かに質問したいが、なかなか人がいない。

やっと見つけた方に、再び尋ねる。


「あそこのちょっと先に、鉢植えで柿を作っている方、ご存じないですか?」

「ああ、ああ、知ってるよ、関谷さんとこ。」


そう聞いて、小躍りして私が喜んだのは、想像に難くないだろう。


「お住まいご存知ですか?」

「おお、おお、あそこのな、こういってこういって、こう曲がったところに、屋敷がある。あ、でも、今日はおらんかもしれん。あの地区で不幸があっての、今日はたしか葬儀だわい。」


関谷さんの家は意外と畑から遠く、道も、よそ者の私にはわかりづらかった。

しかも、私は方向音痴。

車を再度降りて、通りすがりの方に道を聞いて、ようやくたどり着いた。


「おお~」


大きな、大きな家だった。脇には畑もあり、どうやら梨を作っているようだった。

ご自宅の前には、鉢植えの柿もある。

何度か予鈴をならしたものの、どなたも、出てこない。


そう言えば「葬儀かもしれない」と言ってたっけ。

せっかっく、ご自宅まで辿り着いたのに、すごすごと帰るわけにもいかない。


そういえば、ここに来る前に、お葬式をしているお家を目にしたような。

薄い記憶を頼りに、来た道を戻った。


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