さんしょの、おもひで。

和歌山の紀美野町の宇城さんを訪ねたときのこと。


当時は、まだ海草郡という名称だった。

一通り、お目当ての紀ノ川柿の圃場を見せてもらった後、なにやら赤い実がなっていて、「これは何ですか?」と聞いた。


「ああ、それですか、それはですね、あ、さわらんほうがええですよ。ヘタすると、しびれますよ。」と注意が入った。


山の斜面を利用した、段々の柿畑の中に、明らかに違う木があり、赤く熟した小さな実がなっていた。


「へ?」


「それは山椒ですわ。」


「さんしょ?」


「山椒はあまり知られていないですが、柑橘の仲間なんですわ。緑の時に収穫して、乾燥させて、それをひいたものが、粉山椒で、青いときの粒を佃煮や、煮物にする方もいらっしゃるんです。」


「へえ~。」


「和歌山は産地でしてね。結構良いものが採れるんですよ。」


「へ~。食べてみても良いですか?」


「いやー止した方がいいですよ。」


「ま、なんでも経験なんで。」


宇城さんの制止を聞かず、一粒だけ口にしてみた。

なんだ、大したことないじゃん、と思った後、しびれる、しびれる、辛い、辛い、唇がたちまちマヒして、まるで唇が膨らんだような感覚になった。


「半日くらいは、その感じが続くと覚悟した方がええですよ。」と宇城さんはサラリ。


ただ、なるほど柑橘に似た香りがあり、一瞬、みかんの皮を食べたときのような感じがある。

しびれるにはしびれるけれど、美味しいと思った。


あれは、10年くらい前の事。


お得意様から、ここにきて、「山椒の実は取り扱い無いんですか?」とお問い合わせをいただいた。


「ありますとも。」


早速、宇城さんに連絡して、譲っていただくことにした。


山椒の刺激は、けっこう、クセになる。

ぜひぜひとびきりの、和歌山の山椒を味わってみてほしい。

あ、もちろんこちらは、赤い完熟果ではなく、青い生山椒。
湯がいて、水にさらし、好みの辛みに調整した後、煮物などに加えてみてください。

■山椒(粒、生) 和歌山県産 約50g入 648円(税込)

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