公私混同8。~今日は、本当に楽しかった~

山を下りて、余市駅のほうに向かう。
1件目の「輝」は、満員で、入れなかった。
2件目。
ニッカウヰスキーの工場の向かいにある「たけや」という食堂に入った。
やけにお寿司が美味しく、中でもサケが美味しいなあ、と思った。

息子たちは個室で、座敷だったこともあり、大暴れ…。

皿は割るし、水はこぼすし、とっくみあいのけんかも始めるし…。
店員さんから「静かにしてね~。ほかのお客さんもいるからね~」と何度も注意されてしまった。

安芸さんの行きつけのお店に、迷惑をかけてしまった。
安芸さんの顔に泥を塗ってしまった…。

安芸さんはこともなげに「男の子だナあ。おお、すごいな。」と優しく見守ってくれていた。

安芸さんにも同じくお子さんが3人いる。
上の二人が女の子で、10年開けて、元延さんが生まれた。

男子3人は新鮮だったかもしれない。

「早く食べて、おさかな見に行こう!」

なかなか食べ進まない息子たちにはっぱをかけ、連れて行ってくれた場所は余市川。
土手に車を止めて、川のほうに目をやると、カラスが川面に向かって何かを待っている。


何かがぴしゃっとはねるのが見えた。

「鮭だ!」

いわゆる鮭の遡上(そじょう)。

ぴしゃぴしゃと跳ねる跳ねる。

「あ~だいぶ少なくなったナあ。」と安芸さん。

テレビなどで見るよりも少しボリュームは少ないが、体調60㎝を超える大きな鮭がぴしゃぴしゃと跳ねていて、息子たちも興奮。

興奮した三男は、安芸さんと私で気を付けてみていたにもかかわらず、つるんとすべって、川に落ちた。

「大丈夫、着替えは三着持ってきているから!」

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「すごいですね~」

安芸さんの自宅に帰るミニバンの中で、切り出した。

「北海道の、少し大きな川であれば、普通に見られる風景だヨぉ。」と安芸さん。

「ちなみに長男は虫好きなんですが…?」

「ここらは、夏の夜中にいっぱいいるよ。電灯に向かってクワガタがいっぱい。」
「カブトムシは!?」
「クワガタに交じって少しはいるんじゃないかナあ。」

俄然長男の目が輝く。

「とーちゃん、夏もここに来たい~。」

かくして、大興奮のうちに、安芸さんの家を後にした。
安芸さんには、優に5時間はお付き合いいただいてしまった…。

続いて向かうのは、森さん。

森果樹園は、由緒正しい余市のりんご農家で、栽培面積が最も大きい農家のひとつ。
健二さんは、私と同じ世代で、よくよく聞けば、いちごトマトの生産者、中野勝さんの親戚にあたる。

顔だちも似ている。

勇さんの弟さんの息子で、森家に婿入りしたのだそうだ。

りんごの個人への小売りもなさっていて、駐車場スペースも普通にある。
安芸さんの家からは、200mほど行ったところにある、ご近所さんだ。

例にもれず、子供用のミニ車があり、こんどはショベルカータイプだった。
一台しかなかったので、取り合い…。

その間、今年の作柄をヒアリングした。

「雨が多くてネ。プルーンも柔らかくなるのが早くて日持ちしないから、発送をやめました。」

「そうですよね。西洋梨もすぐ終わっちゃいましたよね。」

「グランドチャンピオンは外来のハバチにやられてしまったんですよねェ。そんなに強い虫じゃないから、防除すれば、すぐ処分できるんだけど、同じ時期に、受粉を手伝ってもらっている蜂にも影響が出ちゃうから、今年は、もう、そのままにしてしまいしました。」

影響は大で、グランドチャンピオンはほぼ全滅だった。

「そのほかは~りんごはまあ、順調かな。ひめかみも、もうもぐし…。」

試しに、一玉だけ収穫させてもらうと、本当に蜜たっぷりで、ジュース分もたっぷり。
糖度は13.4度。

「他のりんごはどうです?」

「今年はりんごはほぼ順調で、『紅の夢』も出せそうですよ。あとは『こうこう』がだめで、もう切っちゃおうかと。『黄太郎』も出るけど小玉になりそう。」
と、これからすぐに出始める、珍しいりんご、「紅の夢」についても教えてくださった。
中の果肉が赤い、すごいりんごだ。
普通、果肉が赤いと、ポリフェノールが含まれており、渋くなるのだが、紅の夢は、渋くならない。
昨年は一玉もとれず、ご予約いただいたお客様すべてに謝罪してキャンセルしなくてはならなかった。

今年はとれる、ということで、また楽しみだ。

「それくらいかナ。」

森さんは、安芸さんと違い、まだまだプレイングマネージャー。
収穫時期で多忙なので、早々にお暇することにした。

早めにホテルに入って、息子たちとゆっくりするとしよう。

「今日は本当に楽しかった。」

そんな次男の言葉が、なんだかとても嬉しいのだった。

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