塩の強制送還…。

 ただし。


ノワールムーティエ島は、イタリアのチェルヴィアと違い、洪水に遭ったわけではない。

そういえば、わが妹はフランスに嫁いで現地にいる。

泣きついてみることにした。


ノワールムーティエの塩を日本に送ってほしい、と。


私が学生の時は、こういった連絡は少々骨が折れたが、今ではLINEというもので、すぐに返事が来る。

8時間の時差があるものの、朝と夜、ぎりぎりタイミングが合うようで、「ネットで買って送るよ。」と優しい返事が来た。


有難い。


妹はEMSで送ってくれたようで、11日にフランスから発送されたものが14日には日本の豊島区にすでに届いていたようである。

ところが、妹から慌てた様子のLINEが来た。


「おにいちゃん、ごめん、フランスに戻って来ちゃうみたい!」

「え、マジで?」


妹から送られてきた画像には retourn'e=返却の文字があった。


教えてもらった送り状番号を調べると、前述の通り、豊島郵便局には来ていることが分かり、電話番号も記載があったので、朝から10数回架電。

が、一切、つながらない。

切り替えて、郵便局の共通のサポートセンターに電話したところ、つながったものの、「もう返送手続きに入ってますね。フランスに返送されます。」と杓子定規の回答が。


せっかく送ってもらった塩である。

そう簡単にフランスに戻されてたまるものかと語気を強めた。


「14日の夜に豊島郵便局に届いて、なんで15日の朝8時に、返送が決定されているんですか!? おかしいでしょう?」


数時間の間に、誰が、何をもって、強制返還の判断をしたのだろう?意味が分からない。


「マンション名が書いてなかったようですね。」


いつもの郵便も、ゆうパックさんの荷物も、ヤマト運輸さんも佐川さんも、そんなものを書かなくてもきちんと届く。


「それでしたら、直接、豊島郵便局に問い合わせてください。私どもではわかりかねます。」

「だから!!!! 朝から十数回電話してますが、つながりません!」

「…わかりました、私どもの方から、豊島郵便局の方に連絡します。正しい住所を教えてください。」


―正しい住所って…。

妹から送られてきた画像には、アルファベットではあるものの、正しい住所だった。

半分頭に来ていたものの、きわめて冷静に、落ち着いて、ビル名を含めて日本語で住所を伝えた。


「わかりました、この後、お客様の方に、直接、豊島郵便局から連絡が行きますので。」

「有難うございます。」


電話の向こうの方の言葉から推察すると、今こうしている間にも、フランスに強制返還されそうである。

こんな悠長で良いのだろうか?と気持ちは焦ったが、なんとか平静を装い、感謝の気持ちを表し電話を切った。

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