佐賀行きの前夜。

 「良いですよ、私、売場、代わりますよ。」


事務所出勤の日。

佐賀のれんこんを取り仕切ってくださっている代表の方がなくなったことを聞いた。

かれこれ20年以上のお付き合い。

訥々としたしゃべり口で、口数が少ない。

肩幅があって、威厳のある方だった。

昨年、訪ねたけれど、奥様や息子さんにはお会いできたけれど、ご本人にお会いできなかったのは、やはり体調がすぐれなかったのかと気が付いた。

SKIPの時からのお付き合いだから、26歳の時からか。

参列したいが、佐賀はなかなかに遠い。

弔電や供花を手配すべきか。

明日の告別式は、売場出勤の日。

私が抜ければ、売場に迷惑がかかる。

迷っていたら、隣の社員さんが、それを代ろうと申し出てくれたわけだ。


検索したところ、佐賀行きの飛行機は、片道で5.2万円。

往復だと十万円を超える。


売場のスタッフさんと面談とミーティングの約束があったので、迷ったまま、会社を出た。


「社長、気が変わりましたら、言ってください。お世話になった方ですから、ぜひ参列してください。」




二つの面談が終わったのは、17時も過ぎ、18時に近い時間だった。

弔電や供花を翌日の式に間に合わせるには、会社によっても違うが、12時までだ。

思いついたこともあった。


福岡空港行きならば、安価な便があるのでは。


ノートPCを開き調べてみると、成田空港から福岡空港の便は、7000円台だった。

空港使用料やクレジットカード手数料などもろもろ諸経費を加えても、往復で17000円で行けることが分かった。

事務所に連絡し、翌日の売場の担当を代わってもらった。

売場にも連絡し、26歳の時からお世話になっている方だから、参列したいと報告。


「行ってらしてください。そういうことで、後悔しないようにしてください。」ともっともなアドバイスをもらった。


そこから翌日に回そうと思っていた事務仕事を矢継ぎ早に終わらせ、レンタカーを借り、お店から運ばなくてはいけないものを事務所に運び込んだ。

レンタカーは、ガソリンを給油すると割引になるシステム。

欲をかいて、ガソリンが少ないものを借りたのだが、それがいけなかった。

都内のガソリンスタンドが開いていないのである。

十時を過ぎ、どこも営業していない。


「給油してください」の表示が出て、ガソリンスタンドのマークが点灯し、いかにハイブリッドカーで燃費が良いとは言え、私をどぎまぎさせた。

そういえば、SKIP時代の社用車は、ガス欠ですぐ止まったっけ。

プスンプスンプスンと言ったかと思ったら、道路の真ん中であえなく立ち往生。

会社に電話して、先輩にガソリンスタンドまで走ってもらい、専用のタンクに詰めたガソリンを持ってきてもらい九死に一生を得た。


あの思いはしたくない。

頼れる先輩もいない。

ましてや、10時も過ぎた真夜中だ。


必死に、ガソリンスタンドを検索したけれど、4つ目もチェーンがかかりすでに閉まっていた。


ほぼあきらめ、ゆっくり、エコな運転でレンタカーの返却場所まで行こうと思っていたところ、ガソリンスタンドが目の前に突如現れた。

カーナビには一切表示されていない。

でも、目の前にある。

V字に分かれた交差点の真ん中に鎮座する特徴的なフォルムのガソリンスタンドには見覚えがあった。

結婚式の前後に何度も来たガソリンスタンド。


良かった~


小躍りしながら、給油した。


そこから、下道を走って有楽町駅近くのレンタカー駐車場に返却し、帰途に就いた。


結局0時を回ってしまった。


明日、起きられるのかな???

コメント

人気の投稿